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Covid-19 Boosters — Where from Here?

Covid-19 ワクチン追加接種―次の一手?

  • Paul A. Offit, M.D.

Children’s Hospital of Philadelphia, Philadelphia.



2020年12月10日、ファイザー社社長は米国FDAに対して、36,000名における同社のCovid-19へのmRNAワクチン(BNT162b2)2回の前向きプラセボコントロール試験の結果を報告しました。このワクチンは健康状態や人種や民族的背景にかかわらず、すべての年齢層における95%の人々の重症化防止に有効でした。重要なことは、6か月後でもこの重症化予防効果が持続していることです。これらの疫学的研究は、Covid-19の重症化防止に関与するメモリーB細胞とT細胞が長期間多数存在し続ける免疫学的な研究と矛盾することのない結果でした。


2021年9月、BNT162b2ワクチンが使用可能になってから10か月後には、イスラエルの研究者が、60歳以上の人々における重症化予防効果は、3回目の接種によって増強されることを明らかにしました。これを受けて米国CDCは、65歳以上の人々はmRNAワクチンを3回接種するよう推奨しました。


現在文献的には、イスラエルの研究者が新型コロナウイルスB.1.1.529(オミクロン)変異株流行中に平均72歳の対象に調査をおこない、mRNAワクチン4回目接種は重症化予防効果をさらに増強することを報告しています。この知見は、FDAとCDCが、50歳以上の人々に対してさらなる(4回目の)追加接種をするように決定した過程で重視されました。


より若い世代に対する追加接種はどうでしょうか?米国における研究では、18歳の人に対するBNT162b2ワクチン追加接種が重症化の予防に有効であることを明らかにしました。残念なことに、これらの研究は対象を同様な生活環境とするような階層化がされていませんでした。このためこれらの若年者のうちどのような層に追加接種が最も有益なのかが不明瞭でした。その後CDCは12歳以上のすべての人は、危険な問題因子があったにもかかわらず、BNT162b2ワクチンを3回接種するように推奨しました。すべての人々に対する追加接種が推奨されたことによって、サマーキャンプでも高校、大学、病院や会社でもmRNAワクチン3回の接種が必要になりました。2022年2月には小児における追加接種を支持しない研究が報告されました。それによると、CDCの研究者は、12歳から18歳の若年者では、2回のBNT162b2ワクチンで長期間重篤な病態を予防しうることを明らかにしています。


重篤化の予防に加えて、数か月間継続されたBNT162b2のフェイズ3の研究では、軽微な症状をも95%予防することを示唆しています。しかしながら、重篤な症状の予防と異なり、軽微な病態の予防;ウイルスに曝露時にはそれに特異的な充分な中和抗体が必要ですが、この中和抗体は接種後6か月の間に減少してしまうと考えられています。これに対してファイザー社の研究は、追加接種は軽微な感染の予防効果を回復させることを示しましたが、残念なことにこの予防効果は数か月しか持続しませんでした。追加接種の軽症感染に対する予防効果が短期間では、感染蔓延の増幅を抑制する効果はたいして期待できないのです。


これではワクチンをしっかり接種することに疑念が生じる事は否めませんし、どういうことなるかは容易に想像できます。論を待たず、Covid-19ワクチンの一番残念な点は、軽症や無症状感染を予防できない;「ブレイクスルー」させてしまうことです。どんなワクチンでもその目的は重症化を予防しー入院を防ぎ、集中治療室に入ることなく、命を落とすことがないようにすることです。しかし「ブレイクスルー」という単語は失敗を意味しますし、現実的ではない不安を増幅し、このウイルスに対する実用的ではない硬直した戦略(zero-tolerance strategy)の採用につながりかねません。ある時点において、ワクチン接種、自然感染、あるいはその両方を甘受することなしには、軽微な感染を防ぎ、パンデミックやエンデミックを克服することはできないのです。


さらに加えて、追加接種にも副反応がありますので、どういった方々が接種を受けるべきなのか明確にすべきです。例えば、お子さんや16歳から29歳までのかたはmRNAワクチンによる心筋炎罹患の危険があります。すべての対象者に「original antigenic sin」と呼ばれる理論的な問題がおこってしまう危険があります。これはワクチンの対象病原に免疫機能がロックオンされるため、そのほかの病原に対する免疫反応が妨げられてしまうということです。これはたとえば、実験動物において、オミクロン変異に特異的な追加免疫を受けても、もともとの変異前のウイルスによって追加免疫を受けるほどにはオミクロンに特異的な中和抗体価が上がらないといった事象があるのです。この潜在的な問題は新しい変異株に対する応答性の限界を示唆しているのです。


CDCはどのような人が追加接種を受けるべきなのかを明確にするとともにワクチンの限界についても広報する必要があります。さもなければ、軽症や無症状感染者に対する現実的ではない硬直した戦略(zero-tolerance strategy)を取り続けてしまう、すなわち何度も何度も追加接種を継続することで、人々のCovid-19ワクチンに可能なことと不可能なことに関する理解を損なうことになりかねないのですから。


訳注:この著者は、小児への追加接種に懐疑的です。日本の小児科専門医も積極的な発信が必要です。